大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)18 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人大塚重親の上告趣意(後記)第一点について。

所論の各判例違反の主張について、まず供述調書の不可分の供述を分離してその

一部を証拠としたことを前提とする主張を調べてみるに、原判決が証拠としてAの

検察官に対する供述調書謄本の一部を引用していることは所論のとおりであるが、

その引用部分のみによつて事実を認定したものでないことは、他の挙示の証拠と照

合すれば明らかであるのみならず、右供述調書謄本を全部にわたつて精読してみる

と、右引用の一部をもつて不可分の供述中から分離し全体の趣旨を変更したものと

は到底認めることはできない。されば所論判例違反の主張はその前提において失当

であるから採ることを得ない。次に証人の意見の供述を証拠としたことを前提とす

る主張についても、右供述をもつて単なる意見の供述に過ぎないとするのは全く当

らない所論独自の見解であつて、その前提に立つ判例違反の主張は採用することは

できない。従つてまた前記供述を証拠としたことはなんら経験則に反するところは

なく、この理由をもつて大審院判例(判例集一巻四八頁)違反を主張することも失

当である。さらに所論の引用する大審院判例(判例集一六巻一四九頁)は、選挙犯

罪に関するいわゆる供与罪と交付罪の差異を判示しているに過ぎず、原判決の認定

する事実を右判例と照合してみてもなんら原判決の判示に誤りはない。また所論引

用の高松高等裁判所の判決は、事案を異にし本件に適切でない。また所論の大審院

判例(判例集一六巻九八二頁)は、共謀の事案に関するものであつて、原審がかか

る関係を認定していない本件には全く当らない。その他の論旨は採証法則の違反、

理由のくいちがい、審理不尽の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らず、

また原判決には所論のような違法は認められない。

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同第二点について。

所論は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人岩沢誠、同村部芳太郎の上告趣意(後記)第一点について。

所論は事実誤認及び法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らな

い(なお第一審判決の証拠の標目の記載及び第一審の第二回公判調書の記載によれ

ば、検察官が証拠調を請求したのはAの検察官に対する供述調書謄本であること明

らかであるから、原判決に「供述調書」と引用したのは謄本の二字を誤つて脱落し

たと認めるのが相当である。また第一審の公判調書の記載によれば、検察官が右A

の供述調書謄本を刑訴三二八条の証拠として提出したと認めるべきなんらの証跡な

く、かえつて被告人側で検察官がこれを証拠とすることに同意していることが明ら

かであるから、刑訴三二一条一項二号によつて提出したものと認めるのが相当であ

り、第一審判決及び原判決になんら法令違反はなく、また事実誤認も認められない)。

同第二点について。

所論は採証法則違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお

第一審判決の判示説明と挙示の証拠とを比照してみると犯罪事実を認めることがで

きること原判決が委しく説明しているとおりである)。

同第三点について。

所論は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人清瀬一郎の上告趣意は、著しく期間を経過した後に提出されたものである

から不適法であり採用しない。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和二九年一〇月二六日

最高裁判所第三小法廷

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裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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